港の待合室は雨のせいもあって薄暗く、
そこには誰も「待ち合い」していなかった。
待合室の片隅に喫茶店のようなものがあり、
そこで何か飲み会が行われていたようで、
にぎやかで、しかものんびりした雰囲気だけが感じられた。
昼間からお酒…これも沖縄らしい感じなのかもしれない。
でも、私は早くホテルでゆっくりしたかった。
そして、最初の目的地である久米島の球場へ足を運ぶために、
バスに乗りたくて、バス停でただそれが来るのを待つことにした。
バス停に貼っていた時刻表を見る。
そしたら、ちょっと待てばバスが来るではないか。
でも、その時間になってもバスが来る気配すらない。
バスは数十分遅れてやってきた。
こんな田舎の道で、混雑していたとも思えないが、
バスはちゃんと来たとはいえ、かなりの遅れである。
私としては、バスが来ただけでもホッとしたのだが…。
離島のバスとはこんなもんなのだろう。
時間通りにくるなんて思わないほうがいい。
それは、そのバスに乗った瞬間分かった。
「どこに行くの?」
と、まるでタクシーに乗ったかのようなことを、
運転手さんに聞かれた。
バスなんて、バス停にしか止まってくれないかと思いきや、
それは大間違いなんだね。
「○○ホテルに泊まるんだけど」というと、
道中でバス停に誰もいないことを確認し、
すべてのバス停を通過した上で、
そのホテルの前で下ろしてくれた。
バスには私の他には乗客はいなかった。
だから遅れるわけもないのだが、
それが島の時間ということなのだろう。
のんびりしていていいじゃないか。
1分1秒を争うよりも、こちらの方がずっと人間らしい生活だ。
私はホテルにチェックインした。
南国らしいホテルで、すぐ隣には当時、島で唯一のコンビニがあった。
それはすごく便利な立地ではないか。
そのコンビニに入れば、
別に久米島でも東京でも変わらない雰囲気がある。
そこでお酒をいっぱい買って、
久米島の夜をお酒で満喫しようというわけだ。
その前に、私はホテル近くの球場へ足を運ぶ。
晴れ男でもある私だが、何と100個目の球場へ足を運んだ時点で、
これが唯一の雨で傘を差しながらの球場行脚となったわけで。