船は大きく揺れることもありながら、
それでも久米島の徐々に接近していた。
正直、船酔いしなかったことが不思議なくらいだ。
道中、久米島の観光スポットを旅行雑誌片手に眺めていたのに…。
船酔いしなかった体を作ってくれた両親に感謝するばかりだ。
途中で見たイルカの大群。
ケラマ諸島の島の数々。
どれも、晴れていたらどれだけきれいだっただろうか…
そう思わずにはいられない。
船は久米島の東岸に近づく。
陸地が見えている…ここがこれからの24時間滞在する場所である。
岸が見えてからが長かったが、
ようやく船は久米島の兼城港に接岸した。
といっても、那覇を出港したときのように、
周りに大きな建物があったわけでもない。
正直、何でここに船が止まるの??と思うくらい、
何もないような場所に船は到着し、私は久米島に降り立った。

船を下り、チケットを手渡し、
私は久米島の兼城港の待合室へ足を運ぶ。
しかし、真昼間でありながら、待合室は真っ暗。
まるでもうすぐ日が暮れる時間のようである。
いくら雨模様とはいえ、もはや夜中の雰囲気すらあった。
ただ、そんな待合室の片隅にあった小さな喫茶店だけは、
何だか妙な飲み会で盛り上がっていたようだ。
いくら夜っぽい雰囲気であっても、
まだ時間は昼を少し回ったばかりだ。
日が暮れるのにも、飲んだくれるにもまだ早い。
そんな待合室を抜けると、そこには何もなかった。
確かバス停があると書いてあったが…。
周りには、船を下りて、家族が迎えにきてくれた車に乗り込み、
港を去っていく人がいる…。
もちろん、久米島に親戚なんていない私は、
当たり前のように、その場で独りぼっちになった。
果たして、バスを見つけなくては…。
バスは時刻になっても来る気配すらないまま、
バス停でひたすら待つことになる。
この日、泊まる予定のホテルは
とても歩いていける距離ではなかったから。
バスだけが頼みの綱だったわけだ。