しかし、あいにくの雨で、何をすることもなく、
私はその日の夜を、ホテルの隣にあったコンビニでオリオンビールや泡盛を買って、
適当に買ったおつまみと一緒に飲むことしか出来なかった。
その日泊まったホテルはベランダが広かったこともあって、
私はそのベランダに出て、真っ暗な外を眺めながら、
そして降りしきる雨をうらみながら、
さらに正面にあったスナックに行こうかどうかを迷いながら、
時は過ぎていったのだった。
結局、その日は何もすることがなくて早めに寝た私。
翌朝、ホテルの近くにあったイーフビーチへと出かけた。
雨はもう上がっていたが、見上げると空は雲で埋め尽くされている。

久米島東部にあるイーフビーチは日本の渚100選らしい。
確かにきれいな砂浜ではあるが、
曇り空だと、それが日本で100個の入るほどの渚かどうかが分からない。
ついでにもう一枚。

晴れてたらきれいだったろうな…そんな砂浜だ。
でも、晴れた日を妄想しただけでは、たいして面白くはない。
せっかくここまで来たからには、
晴れた日の日本で100位以内に入る渚を見たかった。
しかし、こればかりはどうすることも出来ず、
私はこの場所を後にし、久米島西部にある旧具志川村にある久米島野球場に行くことにした。
バスの本数には限りがあるので、
その時間に遅れないようにと、バス停の前で5分前から待機していた。
目の前にはバス会社の事務所があったので、
「ここならまず乗り遅れないだろう…」と思って、待っていた。
しかし、時間になっても、バスは来る気配もなく、
そして、その事務所から人が出てくる気配もないので、
私はただただ不安になるばかりだった。
「沖縄時間」っていうのがあるらしいですな。
時間通りに来ることはないんだとか。
乗る予定だったバスは、始発のバス停で待っていたのに何と10分遅れでやってきた。
でも、これが沖縄スタイルなのだろう。
私はバスに乗り込みただでさえ遅れていて、
いつ出発かも分からないが、運転手がアクセルを踏むときを待っていた。
出発は結局15分遅れ…言っておくがここは始発のバス停である。
一番遅れるはずのないバス停で、いきなり15分遅れである。
バスの中は、私一人だけだった。
バスが出発して早々、バスの運転手はこんなアナウンスをした。
「どちらまで行くんですか?」
アナウンスなので、ぼけっとして聞いていたが、
見渡してみると、バスの中は私一人。
私に向かって語りかけているアナウンスであった。
ハッと気付いて私が「久米島野球場まで」というと、
「はい、分かりました」とのこと。
まるでタクシーである。
そしてそのバスは、途中で誰一人として乗せることなく、
「久米島野球場」に一番近いところでおろしてくれた。
そこにはバス停らしきものはまるでない。
だって、当時、この球場はまだ建設中。
だから止まる必要もないような場所だったからだ。
でも、運転手さんはここで下ろしてくれたわけだ。
バス停もない場所で降りる客。
やっぱり思う…まるでタクシーだ。
何にも縛られないこの雰囲気。
私は好きだな、この感じ。
乗りたい場所で乗り、降りたい場所で降りる…
これが何とも居心地が良かった。